更新日:2016/10/10
長年デフサッカーフットサル界で活躍している船越弘幸選手が、イタリアにフットサル留学しました。
その時の経験を船越選手自身からレポートしていただきました!
以下、船越選手より
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先月の17日から25日まで、イタリアのプロチームでのフットサルの短期留学にいってきました。
イタリアのプロではセリエA、セリエA2、セリエB、セリエC、セリエDのカテゴリーがあり、留学先はセリエBのA.M.Ferentinoというチーム。
http://facebook.com/atletico.ferentino/
念入りにお断りさせていただきますが、これから書く文章はあくまでも「セリエBのA.M.Ferentino」のチーム事情であって、イタリアのフットサル全般のことを指してないので、そこの区別を念頭に入れて読んで頂けたら幸いです。
まず「プロ」とはいえ、こちらでも日本と同じくフットサルのサラリーだけで生活できるものではないらしく、日中は仕事して夜はチーム練習、そして体育館は市民体育館を借りて使用してるものであって、チーム所有のものではありませんでした。
このチームはどちかというと地域密着型のチームで、フェレンチーノ地方のジュニアからU-21までのカテゴリーをA.M.Ferentino(フットサル)が所有しています。
トップカテゴリーの「セリエA」でもこれと似通った環境の良くないチームもあるし、同カテゴリーもしくは下のカテゴリーのチームでもたくさんスポンサーついてて、財政が潤ってて、チーム専用体育館がある環境に恵まれたチームもあります。
要するに、イタリアのプロでも我々が思ってるような華やかな世界ではないという事です。
まず、練習ですが、トップチームは19時〜21時の中で「約1時間半ほど」しか練習やりません。
これはイタリアだけならぬ、ほかの国もそうです。
日本の文化では考えられないことでした。
自分自身20年前にブラジルでプレーしてましたが、ブラジルでは月曜日は午前はランニングのみ、午後はテクニカルトレーニングのみ、火曜日は午前シュート練習のみ、午後セットプレー練習のみとか、週毎の練習メニューが決められてて、1つの練習メニューだけでおしまいというパターンでした。
当初はカルチャーショック受けましたが、こういった経験があるから今回イタリアにきて、練習時間が短いという事に驚きは感じませんでした。
日本は長時間練習が当たり前やし、1回の練習日の中で複数の練習メニューをやりたがるけど、海外にしたらそれは効率的じゃないみたいです。
どこかのテレビ番組で外人の日本人に対する印象のリサーチがあったのですが、日本人は勤勉で律儀でまじめだけど、働き過ぎだから効率悪いしミス多いといってたけど、まさにそういうことですね。
練習メニュー
○月曜日 インターバルサーキットTR、パスを加えてのインターバルサーキットTR、条件付きの紅白戦(2回のパス交換でシュートまでもっていくとか、ハーフコートで守るとか色々条件入れて)
○火曜日 PIVO当てシュート練習加えてのインターバルサーキットTR、ハーフコートでゴールなしのパスゲーム(リターンパス無しとか、2タッチ以下とか、フリーマン加えるとか色々ルール設定)、セットプレーメインの紅白戦
○水曜日 コート全面でゴール無しのパスゲーム(ゴレイロも入れる)、ハーフコートで試合を想定したディフェンスの鳥かご(鬼が3人、ボールまわす外側は6人でダイレクトパス、鬼はしっかり連動してプレスかけて奪う)、同じくハーフコートでケブラを想定した鳥かご(鬼が2人、ボールまわす側が6人、ボール出した人は2人目のパスを貰いにうまくポジション取りしてケブラする)、セットプレーメインの紅白戦
○木曜日 4メートル正方形で4対1の鳥かご、ハーフコートで4対4+フリーマン1人+コートのライン上の4人、紅白戦
○金曜日 オフ(移動)
○土曜日 試合
○日曜日 オフ
印象に残ったのは4点。
1、当たり前のことだけど、1プレー毎の「質」がかなり高い。
2、1トラップ目で敵のマークを剥がすようなボールの置き所と体の向きとフェイクのコントラス。
3、横をワイドに使う(日本だと横は3枚に並ぶ傾向が高いが、こちらではボール保持してるサイド側では3人で3角形つくって、もう片方のサイドでは1人待機)
4、サイドでの1対1ではアグレッシブにチャレンジしてシュートまで持っていく意識が高い。
トップチームだけの練習では自分的には物足りなくてU-21の練習にも参加させてもらいました。
トップチーム練習の19時〜21時の前の17時〜19時がU-21の練習時間帯でした。
練習メニュー
○月曜日 体育館全体を使ったインターバルサーキットTR(コート内では器具使って、コート外では観客席の階段を上り下り)
○火曜日 2人でボール使ってのインターバルサーキットTR、プライオメトリック系インターバルサーキットTR、ミニゲーム
○水曜日 オフ(体育館が空いてなかったため)
○木曜日 乳酸系のシュート練習、クワトロのパターン練習、紅白戦
○金曜日 ※金曜日にはフェレンチーノを出てローマ市に戻ったため参加できず。
印象に残ったのは3点。
1、若いからなのか持久系・瞬発系・乳酸系トレーニングをベースにした練習が多い
2、頭が悪い(戦術理解度低い)
3、身体の当たりが強い(チャージで補聴器つぶされた)
やっていることは日本と変わらないんだけど、毎日練習しててメンバー同士の意思疎通が図れてるから、パスの出し手と受け手のタイミングだったり全員の連動プレーだったり、プレー選択肢のイメージ一致だったり・・・当たり前だけど「判断スピード」が早い。
言葉で説明するのは難しいけど、「フットサル」というスポーツは1人では何もできません。
その場の状況での「イメージ」が出し手と受け手がかみ合ってなかったら、次のプレーにつながらず詰まってしまいます。
なので、チームメンバー全員が展開する「イメージ」をどれだけ共有できてるかがホントにすごく大事になってきます。
経験値の高い選手は、チームの特徴だったり選手のクセだったり、ゲームの流れを読んで先の展開イメージが頭の中に膨らんできて選択肢が増え、とっさに対応ができます。
イタリア語まったくわからなくて、監督やチームメイトとは英語もポルトガル語も通じなくてコミュニケーションとれなくて困ってたけど・・・実際フットサルとなると、言葉はわからなくても皆の動きを見て、自分の中でイメージして、いろんな理論をだして、該当しない理論を消去していって、練習の内容と意図を瞬時に掴むことができたので、困ることやついていけないことは全くなかったです。
日頃からのフットサル知識収集やイメトレがこういうときにかなり役たちました。
今回の海外フットサル留学では期間が短かったというのもあるからかも知れませんが、自力(自分の実力)で対応できたので、正直言って「インパクト」というのか、「収穫」というものはあんまりなく、物足りなく感じました。
でも、改めて「ハングリー精神」というものを再認識させられました。
今の日本は本当に何でもできちゃうし、何一つ不自由なことがない便利で環境に恵まれています。
でも、20数年前は今のようにスマホやインターネットなんてない時代。
そんな時期に3年半ブラジルで生活してて、日本とは比べ物にならないくらい劣悪な環境にカルチャーショックを受け、ものすごく苦しい思いをしてきました。
それにブラジル人たちは、自分や家族の明日の生活の為に必死にチームで生き残ろうと1日1時間1分1秒を必死に過ごしていました。
なのに自分は恵まれた環境でのびのび育って来て、生活のかかった厳しい競争社会を経験したこともなく、欲しいものはすぐ手に入るし、周りの選手よりは立派なウェアやスパイクをはいてるし、もう毎日がカルチャーショックの連続でした。
そんな劣悪な環境でなおかつ、生きるか死ぬかの厳しい競争社会の中で揉まれて「ハングリー精神」が身に付き、カッコなんかつけんとガムシャラに泥臭く生きるスタンスに変わりました。
でも、帰国していつの日かどんどん便利になっていく日本の環境に甘えてしまっている自分がいてました。
なので、今回のイタリア留学ではフェレンチーノの田舎生活が非常に不便かつ大変すぎて色々と苦労したので、ふと苦しかったブラジル時代を思い出しては、「ハングリー精神」を再認識させられました。
「もっと謙虚になろう」
「もっと感謝の気持ちを持とう」
「もっと相手を思いやる気持ちをもとう」
そんな心構えにさせられたイタリア留学となりました。
次回は自分の実力には及ばないカテゴリーで「環境」ではなく「フットサル」としてカルチャーショック受けたいし、世界最高峰のスペインかブラジルにチャレンジしたいと思います。
そもそも海外留学しようと決断したきっかけは、去年のデフフットサルワールドカップを経て、日本が足りないものや世界基準のプレーというものはわかってて、普段、所属チームで意識しながら取り組んでるつもりでも、やっぱり同じ日本人同士での環境では経験できないものを体感したいという想いが強くて、それじゃ海外のプロ選手と共にプレーしたらいいんじゃないかという単純な結論に至ったからです。
それに自分はこれまでも含めて現在、関西リーグのチームでプレーしているのですが、「デフ日本代表」になるためにプレーしてるのではなく、「デフ日本代表」というものはあくまでも通過点であって、最終的には健常者のトップカテゴリーのFリーグだったりA代表を目指してプレーしています。
バカげた話かもしれませんが・・・周りの目や常識なんて気にせず、そのバカげた考えをぶらさずに貫き通していくことが大事だと思います。
今のデフの人間に一体何人の人間がこういった考えを持って取り組んでいるのだろうか。
「障がい者」のトップを目指すのではなく、「健常者」のトップを目指すことを小さい頃から習慣化づけてプレーしていかないと、いつまでたってもデフサッカー・デフフットサル日本代表は強くなれないし、世界のトップ4には入れないと断言します。
自分が20数年前ブラジルへ留学した時は今のように簡単に留学できるものじゃなかったし、そもそも「海外留学」という認識さえ浸透してない時代だったけど、今は海外留学斡旋会社や個人代理人業務してる人が増えてるので、特に若い世代は早い時期から世界を知ってほしいし、どんどん海外にチャレンジして欲しいし、自分が年齢関係なく海外チャレンジしてることを引き金にどんどん海外流出していくことを期待しています。
海外を知るということは、「サッカー・フットサル」がうまくなるというよりは「意識」や「精神面」や「価値観」の成長が期待できます。
その「意識」や「精神面」や「価値観」をどう生かすかが、「サッカー・フットサル」そして「人間」として成長できる大きなキーワードとなりなります。
いろいろと偉そうな事を書きましたが、これはあくまでも自分の経験談であるし、学んだことや感じたことをそのままありのまま書かせて頂きました。
今はまだまだ未熟で至らぬ点多々あるので、一人の選手として、一人の人間としてこれまでの経験を活かしつつ、後世にはしっかり見られては真似してもらえるよう、しっかり伝えていけるよう、これからも自分のスタンスを変えずにガムシャラになって頑張っていきたいです。
これからもよろしくおねがいします!!
長々ありがとうございます。